山上ケ岳の登山口がある天川村洞川(どろがわ)地区
(桝谷源逸区長、295戸)が、地元に伝わる子守歌
「おいよ 才兵衛」を保存のためCDに収録、販売もしている。
大峯山をめぐる吉野山との領分訴訟のため江戸に行き、
ついに帰らなかった才兵衛を女房おいよが待ちわびる様子を
つづった歌。 哀調を帯び、おいよの悲しみ、それを思いやる
村人たちのやさしさも感じられる内容だ。
歌の1番は「おいよ 才兵衛は まだ戻らぬか まだも戻らぬ
ながの旅 ヨイヨ」で始まる。全部で3番まである。
桝谷さん(57)は「子どものころ、母親が歌ってくれた。
そのころは1番だけ。 洞川には他には民話などはない」
と言う。
しかし近年は歌われることもなく、忘れ去られる心配があった。
昨秋の龍泉寺の祭りで、阿波踊り同好会「行者連」(40人)が
歌を取り入れたら好評だった。
このため地区がCDにし、今後に伝えることになった。
踊りの連代表、赤井憲彦さん(57)によると、曲は女性会員が
祖母らから聴き、振り付けを考えた。 歌は吉野光子さん。
歌の時代や才兵衛が実在したのかは定かでないが、
吉野山との紛争は記録も残っている。
才兵衛の運命は、訴訟に負けた責任をとって身を隠した、
路銀を使い果たし行き倒れになった、などの伝承がある。
曲は1分余りで、CDでは、踊れるように歌を繰り返して
1回6分40秒にまとめている。
笛、三味線、太鼓の伴奏だけのもある。
問い合わせは桝谷さん(0747・64・0316)。